アスコン締固めと骨材間隙率

ここでのキーポイント
○アスコン品質の良否は空隙率で決まる
○マーシャル締固めでは真の空隙率はわからない
○ジャイレトリコンパクタ締固め効果を評価する
○アスコン締固めの難しさと今後の課題
○アスコン締固めは永遠の課題かもしれない

1.アスコン供試体の締固め

アスコン供試体の締固めは通常「マーシャルランマ(MR:Marshall Rammer)」で行います(以下,MR締固め).MR締固めは不十分な締固めとされるが,その検証も併せて「ジャイレトリコンパクタ(SGC:SHRP Gyratory Compactor )」締固め(以下,SGC締固め)も行い,ここでは,その両者を比較検討したものである。
MR締固めは舗設後の交通転圧を考慮していないため,不十分な締固めとされるが,SGC締固めは交通転圧を考慮した締固めで非常に強力なものであることは確かな事実であります。
このSGCを用いて,MR締固めとの比較を行った過去の実験があるので,それを締固め後の空隙率の観点から見直しを行ったものであり,以下に述べてみます。

2.実験方法

(1)粒度配合と供試体の締固め
実験に用いたアスコン粒度配合は「密粒度アスコン(13)」と「排水性アスコン(13)」の中間粒度であるSMA(Stone Mastic Asphalt)配合としている。
使用骨材は、6号砕石、7号砕石、スクリーニングス(Scr)、粗砂、細砂、石粉の6種類である.6号砕石(13.2~4.75mm),7号砕石(4.75~2.36mm)は上下限をカットし単粒度にしている.Scrと砂は2.36mmふるいを通し上限をカットしている。

供試体はMR締固め用とSGC締固め用の両者に対応できるよう,それぞれ個別に作成している。骨材の混合組み合わせによる配合種は8種類とし,As混合量は±0.3%きざみで各3配合としている.MR締固めは両面各50回,SGC締固めは最大の300旋回としている。

下記に,表-1 使用骨材一覧表,表―2 骨材配合と合成粒度を示す。

 

 

3.実験値の検討

(1)MR締固め空隙率とSGC締固め空隙率の関係
試験供試体をそれぞれMR締固めおよびSGC締固めを行い,測定密度から空隙率を算出して整理し,それらデータを基に作成したグラフがG1グラフである。(下記に示す)
グラフG1によれば,MR締固め空隙率とSGC締固め空隙率との間の相関関係は弱いようである.合成粒度の2.36mm通過率が約29%の位置(中央〇印)のところで同じ空隙率(≒3.2%)となっている。
それより細粒側配合(左側)ではMR締固め空隙率が大きくなって、締固めが不十分であることが解かる.仮にSGC締固め空隙率が1.5%であるべきものが,MR締固めでは2.8%程度と1.3%程度も大きくなっており,MR締固めは不充分な締固めであることが解る。
一方,粗粒側配合(右側)ではSGC締固め空隙率が4.5%であるべきものが,MR締固めでは3.5%程度と1.0%程度も小さくなっている.これはMR締固めがよく締まっていると解釈するのではなく,MRの衝撃で粗骨材(砕石)が接触点破壊を起こしていると解釈するのが妥当であると考える。
上記締固め試験により,SGC締固めは充分な締固めであるのに対し,MR締固めは不充分なものであることが解る。

4.アスコン供試体締固めのまとめ

MR締固め用供試体とSGC締固め用供試体を作製し,それぞれ締固めを行って,それら密度を測定し,それぞれ空隙率を算出し,一覧表に整理し、両者の関係をグラフに作成したことである.そのグラフから,MR締固めは不充分な締固めであるのに対し,SGC締固めは充分な締固めであることが結論であった。
今後においても,アスコン配合設計がMR締固めで行われる限り,不十分な締固め供試体から配合の良否を判断することは危険だと言わざるをえません.今後とも,失敗配合の繰り返しが懸念されると言わざるをえません。
最後に,アスコンの配合設計をする立場で考えてみると,試験供試体を作製し,その試験結果からアスコンの良否を判断することはできないと言わざるをえません。