特密粒度アスコン(13)の提案(現場施工者から喜ばれる細粒配合アスコン)
1.施工現場からの要望
アスコン製造工場から出荷されるアスコンは,再生アスコンを含めて「密粒度アスコン(13)」が最も多いようです。国道,県道などの表層アスコンでは,密粒度アスコン(13)で設計される場合が多く,また,それに準じて一般道でもやはり「密粒度アスコン(13)」で設計されています。
設計者側では現場の状況や交通条件から,細粒度アスコン(13)で設計したいと判断しても,設計価格が高いので細粒配合にはしないのが通例となっています。
これに反して,施工者側では現場状況や施工場所から,設計は密粒度アスコン(13)だが,細粒配合のアスコンを要望する場合が多くあるのです。
ここで,現場施工者側から喜ばれる細粒配合のアスコンとして「特密粒度アスコン(13)」配合を以下に提案してみました。この配合は「密粒度アスコン(13)」と「細粒度アスコン(13)」の中間粒度を目標にした配合です。その使用にあたっては規格外の配合なので、後段で注意事項を述べます。
2.特密粒度アスコン(13)の提案
「特密粒度アスコン(13)」の粒度範囲は,密粒度アスコン(13)と細粒度アスコン(13)の中間粒度を目標としています。その考え方・方法は,合成粒度の細粒側(2.36mm以下)は密粒度アスコン(13)の粒度範囲とし,粗粒側(2.36mm以上)は細粒度アスコン(13)の粒度範囲とします。
アスファルト量(As量)などの仕様・特性規格値は,密粒度アスコン(13)としています。
As量などの特性規格は,通常,細粒側粒度によって決まるとされ,この場合,密粒度アスコン(13)の規格値で良いと考えました.「AD canシステム」ではAs量5.5%で自動設定しています。
上記の述べた配合で,現場側から喜ばれる「特密粒度アスコン(13)」ができます。
下記に,目標粒度範囲と粒度曲線範囲を示します。
3.特密粒度アスコン(13)の品質特性(最適石粉量決定の難しさ)
「特密粒度アスコン(13)」配合は,合成粒度の2.36mm通過率を多くすることが基本です。
要するに,細粒材を多くすれは良いのだ,と一言でいってしまえば簡単なことですが,実は,そう単純なことではないのです。
As量は密粒度アスコン(13)と同程度の5.5%と決めていますが,その他検討を始めると,最後に問題となるのが石粉量をどの程度にするかなのです。この石粉量が骨材間隙率(VMA)の大小に密接に関係しているのですが,このVMAの大きさが分からないからなのです。
石粉量が多くなるとVMAは小さくなり,一定量のAs量でもベタベタの配合になります。逆に,少なくなるとVMAは大きくなり,オコシのようになり,粘り気のない,スコップの刺さりやすい,サクサクしたアスコンになります。(これは経験済みです。顕微鏡で100倍程度に拡大して視ると,細粒部分がオコシ状に見えます:これは考え方です.)
具体例を述べると,コンクリート用の粗目砂のみを50%も使っていると,VMAが非常に大きくなって,まとまらないアスコンになるが,適度な量の石粉量で解決はできます。ここで,この石粉量の問題となるが,これが簡単には分からないのです.このように,細粒材(Scr,粗砂,細砂など)の使い方によって,最適石粉量が1%~5%もの範囲で変動するので,これは,経験による「勘どころ」で解決できるものではありません.As量は5.5%と決めているので,石粉量の決め方がむずかしくなることを付記しておきます。
付け加えると,マーシャルランマで締め固めたアスコン供試体からでは,石粉量の最適量を求めることはできません。その理由は,十分な締固めができないからです。細粒配合になればなるほど,さらに締固めが不十分なものとなり,その供試体から空隙率や飽和度を求めても,最適石粉量は判断できないのです。
アスコンのVMAは石粉量によって大きく変動するが,これを直ちに計算してくれるのが,「AD canシステム」なのです.それは「骨材間隙率計算方程式」が組み込まれているからです。
「AD canシステム」はこれら設計計算を初め,配合決定までをボタンの一押しで「自動計算」してくれます。
詳細な「評価コメント」に誘導されて,正しい細粒配合の設計ができるようになっています。
本ホームページで案内している「デモ版」でも「特密粒度アスコン(13)」の配合設計が組み込まれているので,是非お試しいただきたく思います。
4.特密粒度アスコン(13)の出荷について
提案する「特密粒度アスコン(13)」の出荷に際して一つの目安を記しておきます。
密粒度アスコン(13)で設計されている工事で,現場の状況から施工者は細粒配合が欲しいと要望してくる場合の対応です.それは,最後に竣工検査のある工事で規格外を指摘された場合は出荷工場側の責任になるからです.現場のためを思う気持ちと矛盾した話です。
「特密粒度アスコン(13)」を出荷する場合は設計者側との何らかの合意が必要になると思います.このような場合には事前に発注者側と施工者側との間で何らかの合意形成をしておく必要があると思います。この合意形成ですが、発注者側でも当初から細粒配合が良いと思われている場合も多く,事前打ち合わせで解決できる場合が多いと思われます。
俗に云う「小口の引き取り合材」と称するものは、上下水道・ガス工事などの復旧工事に使用するものなので問題ないと思います.民間工事も同様です。
問題なのは,学校,公園,霊園,文化センターなど,歩行者や小型車のための道路で細粒配合が適している場合,また,上記述べた復旧の本復旧工事を含みます.これらが一つの工事として発注されるような場合には必ず竣工検査がありますので注意が必要だと思います。
5.具体的な配合設計例
1)「AD canシステム」の「デモ版」で「特密粒度アスコン(13)」を計算・作成してみた結果は以下のようなものでした.
①配合種選択:特密粒度アスコン(13)のチエックボックスにチエックを入れる.
『Return』 ボタンで戻す.これにて設定は完了です。
②骨材の選択:6号砕石,7号砕石,Scr,粗砂,石粉の5種類とした.
細粒材は,Scr,粗砂の2種類とした.
③自動設計: 『自動設計』 ボタンのクリックで問題なく所定の粒度範囲に収まる.
④評価コメント: 評価コメント ボタンのクリックで指摘された修正方法に従い修正し,最適な細粒配合ができました.
2)細粒材の使い方について―――
特密粒度アスコン(13)の配合では,細粒材混合量が50%以上になるので,一種類よりも2種類使用が良い配合になります.それも「良い細粒材」と「悪い細粒材」の二種混合が良い配合となるようです。
ここで,細粒材の良い,悪い,の目安として大別してみると,(あくまでも目安です)
「良い細粒材」: 粗砂,Scr(0.075mm通過率7%未満) → 粗砂は価格が高い
「悪い細粒材」: 細砂,Scr(0.075mm通過率7%以上) → 細砂は価格が安い
「良い細粒材」の「粗砂」だけを50%も使用していると,0.075mm通過率が不足し石粉量を増やさなければならず,結果として,製造原価が高くなってしまいます。
細粒配合アスコンでお薦めしたい細粒材はスクリーニングスであることが解りました。価格も安く良い細粒配合アスコンができます。
3)最後に付け加えておきます
細粒配合アスコンでは細粒材を50%以上使用するので,この細粒材の使い方が非常に難しいと云うことです.細粒材はその地域その工場によりその品質(特に粒度)は総て異なり同じものはありません.と云うことは,あの工場ではこうしているから,あの時はこうしたから,と言ってそれを真似ても同じものは出来ないのです.石粉量の最適量が解らないからです.過去の経験や「勘どころ」で解決できる問題ではありません。
ここで「AD canシステム」の真価が発揮されることになると思います.是非「デモ版」でもできますのでお試し頂きたく思います。